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【休職と復職】その3:休職中の過ごし方

一休みの画像 HomegroundsによるPixabayからの画像

 

仕事を休もうかと考えている方/既に休まれている方から相談を受けることが、最近ちらほら。

それぞれ置かれている状況は異なり、悩んでおられる内容も異なるのですが、基本的な事項についてまとめてみました。

 

※書き始めたら、あまりに長文になりすぎたので、4つに分けます。

 

目次

その1:休職していいの?

その2:休職のための手順

その3:休職中の過ごし方(今回記事)

その4:職場への戻り方

#3

その3:休職中の過ごし方

ハンモックの写真、skeezeによるPixabayからの画像

 

「休職中はどのように過ごせばいいのでしょうか?」も、非常に多い質問です。大原則として、休職初期は、脳を休めるため小難しいことは考えないことが必要です。この脳を休ませる方法の中で、1番優先されるのが睡眠です。

 

なぜかと言うと、脳は非常にデリケートな臓器です。睡眠をうまく取れないと、脳は動作不良を起こすため、よく眠ることが大切です。休職に入るまで、自分の睡眠時間を削って忙しさに対処しておられた方もいるかもしれませんが、休職に入った以上、脳を休めるため5時間以上は布団の中にいるようにしましょう。つまり、疲れたら眠る・朝はゆっくり起きる・昼寝をするなどの行為が推奨されます。

 

そして、可能であれば、できるだけ毎朝決まった時間に起きるようにします。その際の起床時間は、理想の時刻や起きたい時刻ではなく、自分が目を覚ますことができる時刻にすることが大切です。ということで、自宅で療養される方は「規則正しく生活しなきゃ」と最初から頑張ってしまう方も多いのですが、焦らないことが必要です。生活リズムにはこだわりすぎず、自分なりに入床/起床時間を整えてゆっくり眠れるようになりましょう。なお、生活リズムを整えるのは、復職が見えてきてからです(※ゆっくり眠れている方は、以下の文章はパスしてこちらへどうぞ)。

 

しかし、中には、なかなか、ゆっくり眠ることができない方もおられます。

というのも、病気(うつ)になると不眠症状が出るからです。睡眠がうまく取れない方は、主治医の先生に相談して睡眠を整えるお薬を処方してもらうことも1つの解決法です。また、最近では不眠症に対する認知行動療法(=自分自身の生活習慣と、睡眠に対する考え方を見直して、適切な睡眠習慣を取り戻す治療)も盛んになってきています。書籍も出ていますので、必要な方は目を通してみることをお勧めします。

 

以下に、不眠から脱せない方が、自分で取り組める認知行動療法の手順を簡単に記します。

 

 自分の睡眠を記録する 

睡眠日誌をつけてみましょう。①布団に入った時間、②寝付いた時間、③途中で目が覚めた時間、④布団から出た時間、を書き留めると良いです。ただし、厳密に記録を取ろうとすると、かえって眠れなくなりますので、だいたいの感じで記録しましょう。

 

睡眠日誌は自分なりに作成してもいいですが、最近はネット上にたくさん載っているので、自分にあったもの(紙形式・アプリなど)を探すこともアリです。他のサイトを、ご参考までに。

 

ヤマネ先生の睡眠日誌(https://www.suimin.net/data/nisshi.html)

SLEEP CULTURE(http://tomononao.com/suiminnisshi/)

過眠症の杜(http://kaminsho.jp/sleepdiary.html)

不眠症に対する認知行動療法(https://www.slideshare.net/ShunNakajima1/cbti)

 

StartupStockPhotosによるPixabayからの画像 パソコンとノート

 

2週間程度記録を取ると、自分の睡眠のパターンが見えてきます。その情報を基にして、よい睡眠がとれる方法に取り組んでいきます。そして、自分が取り組んだことで、どのように睡眠が変わったかも、続けて記録を取りましょう。

 

なお、新しい取り組みを始めると、一時的に寝不足感が強くなる(=眠気・疲労感・頭痛・無気力・イライラ・落ち込み・興奮などが出る)場合があります。1週間から10日ほどで落ち着くと言われているため、様子をみることも必要です。

 

不眠の代表的な4パターンごと(眠気がこない・熟眠感がない・昼夜逆転・早起き)の取り組みの例を以下に載せます。

 パターン1:眠気がこない 

刺激物(カフェイン・ニコチン)を避けることは基本です。また、眠るためのお酒は厳禁です。お酒は寝つきを良くしますが、その後の睡眠を浅くしますし、深酒になってアルコール依存症を発症させる危険もあるからです。服用している薬(降圧剤・ステロイド剤など)によって不眠が生じている場合もあるため、主治医や薬剤師の先生に尋ねてみることも必要です。

 

これらのことを守った上で、眠気がこない方は、本当に眠たくなってから布団に入り、毎朝同じ時刻に起きる生活に真摯に取り組みましょう。そのため、人によっては『遅寝・早起き』『遅寝・遅起き』となりますが、せっかくの休職期間です。遅寝になっても構わないと腹をくくり、根気よく取り組んで、自然と眠気が生じる生活を取り戻しましょう。自分にあったリラックス法(腹式呼吸・入浴・アロマ・音楽・ヨガ・瞑想など)を身につけても良いでしょう。

パターン2:熟睡感がない方 

このパターンの方は、ぐっすり眠った感じがないため「睡眠時間が足りないのだろう。少なくとも8時間眠れるようにならなきゃ」と焦る方が多いです。ここで覚えておかないといけないことは、必要な睡眠時間は個人によって異なるということ。ですから、8時間睡眠にこだわらなくてOK。短い睡眠時間でも、日中の眠気で困らなければ、あなたの睡眠は大丈夫です。また、たくさん寝ているのに熟眠感がない場合、身体疾患(いびきや無呼吸などの睡眠呼吸障害・痛み・咳・頻尿・かゆみ等)がないかのチェックが必要です。

 

これらを確認した上で、日中に眠気がある方は、5日ごとに自分の睡眠時間を調整していきます。調整のためには、自分の睡眠日誌を見て睡眠効率を計算します(以下の式を参照のこと)。

 式:(5日間の平均睡眠時間)÷(5日間の布団の中に入っていた平均時間)×100

 

例えば、平均睡眠時間が6時間で、布団の中に平均10時間いた人の場合、睡眠効率は6÷10×100=60%になります。

自分の睡眠効率を算出した上で

✔ 睡眠効率85%以上:布団にいる時間を15分ずつ延長する

✔睡眠効率85%未満:布団にいる時間を少しずつ減らしていく

 

この調整法を睡眠スケジュール法と言います。「眠いのに布団にいる時間を減らすって意味が分かりません」と言われる方もおられますが、身体が必要とする時間だけ布団にいると、熟眠感を徐々に感じられるようになると言われています。まずは、睡眠の量の改善ではなく、睡眠の質の改善から目指しましょう。

パターン3:昼夜逆転の 

深夜(場合によっては明け方)にならないと眠気が来ない割に、いったん眠ると、ぐっすり眠ってしまい、昼頃にならないと起きられないタイプです。若い方に多い睡眠パターンであり、深夜のバイトやゲームなどにより、いわゆる時差ボケが生じています。つまり、体内時計が後ろにズレているため、体内時計を早めてあげる取り組みが大切です。

 

体内時計を早めるためには、目が覚めたら朝日を浴びることがお勧めです。光刺激で体内の主時計が整います。起きる時間になったら部屋のカーテンを開ける、開けるのが面倒であればそもそも遮光カーテンは使わない、などがお勧めです。ボーッとしながらで構いませんので、ひなたぼっこしましょう。また、規則正しく食事を摂ることも、体内の副時計が整うため必要なことです。そして、何より 「眠れないから昼夜逆転生活が当然と考えない」ことも大切です。そう思えるようになるためには、周囲があれこれ言うよりも、本人の自覚が必要です。

 パターン4:早起きの方 

日が暮れると(すぐに)眠くなってしまうため、早めに寝てしまうせいか、真夜中に目覚めたり、早朝に起きてしまうタイプです。お年を召すと多い睡眠パターンであり、加齢と共に必要な睡眠時間が減っていくことも相まって、体内時計が前にズレてしまいます。そのため、体内時計を遅くする取り組みが必要です。

 

まず、自分が何時に起きたいかを決めた上で、睡眠日誌を見て入床時刻を計算します(以下の式を参照のこと)。

 式:(自分が希望する起床時間)ー(5日間の平均睡眠時間)ー(人によっては30分)

 

例えば、朝の6時に起きたい人の場合、平均睡眠時間が5時間であれば、入床時刻

朝6時ー5時間=1時になります。場合によっては、更に30分早めの0時30分を入床時刻にしてもいいでしょう。

入床時刻を算出した上で

✔ どんなに眠くても、入床時刻までは寝ない

✔ すぐに眠れない場合、布団から出る

✔ 体内時計を進ませないため、朝の光を浴びない

✔ 昼寝をしない

 

を守りましょう。人によっては、深夜24時を越えてからの入床となるため不安になりますが、徐々に短時間で満足できる睡眠へと変化していきます。早すぎる入床は、かえって不眠の維持につながることを覚えておきましょう。

Gerd AltmannによるPixabayからのステップバイステップ画像

休職初期は脳を休めるため、まずは睡眠を1番優先にと説明してきました。ゆっくり眠れるようになった方が、次に取り組むべきことは身体のリハビリです。つまり低下した体力の回復です。筋肉ムキムキを目指す必要はありませんが、日常生活を息切れせずに過ごせる最低限の体力を取り戻していきましょう。

 

「体力は大丈夫なので」と言われる方もおられますが、セラピーに来られた後の帰り道や翌日に、急に疲労を感じてダウンする方もよくいらっしゃいます。これはセラピーに来るため、いつもと違うことをして心身が疲労したのでしょう。その際は「こんなことで疲れるなんて情けない」と嘆く必要はありません。まずは現状把握ができたことを評価しましょう。それから、今の自分にあった運動(軽い散歩やストレッチなど)に取り組んでいきます。

 

ちなみに、運動の際に、無理をしないため万歩計を活用することはおススメです。スマホにインストールする手間はかかりますが、くまもとスマートライフアプリは、くまモンと共に頑張ることができますよ!!何日か記録を取って自分の平均歩数を把握し、平均歩数よりも少しだけ多く歩くことが体力回復のコツです。歩きすぎも、歩かなさすぎも、いけません。

 

Gerd AltmannによるPixabayからのガソリン目盛り画像

体力が少しずつ回復してきたら、次に取り組むべきことはこころのリハビリです。これは、こころが喜ぶこと・いい気分になることを探します。平たく言うと、生活の中での楽しみをみつけてください。ただし、人によっては、これが意外と難しいかもしれません。病気(うつ)になられた方は、そもそも自分は何が好きなのか、自分は何が心地よいのか、自分は何を食べたいのか、など様々なことが分からなくなっておられます。その感覚を取り戻すことがリハビリの第一歩です。

 

ブログを書きながら思い出したことですが、その昔、セラピストがうつ病棟担当心理師だった頃、入院された患者さん達は「早く元気になりたい」と朝から外を一生懸命に歩いておられました。通勤の途中でその姿が目に入るのですが、入院初期の患者さんと、そうではない患者さんとには明確に違いがありました。それは、入院初期の患者さんは、体力つけなきゃと必死に地面をにらみつけて歩いておられるのです。大岩を運ぶシシュフォスのように苦役を課されている表情。そういった方が、ある日急に変化することが、私は好きでした。「空がきれいだから写真撮ってきた」と言って携帯の写真を見せて下さったり、悪戯っ子のように笑って「散歩道外れたらムカゴ(=山芋の肉芽。秋の珍味)みつけた。あ~た(=貴女)にとってきてやるけん、いるね?」とか。そういうことが聞けるようになると「もう大丈夫だな」と確信が持てたものです。

 

ということで、休職中だからと言って、家に引きこもったり、1日中真面目に過ごす必要はありません。日常生活に必要な買い物などのお出かけ・リハビリのための外出・趣味などを、自分のペースで楽しみましょう。これらは、常識的な範囲であれば何も問題ありません(もちろん、海外旅行に行ったり、朝からパチンコ屋で稼いでいたり、SNSに楽しそうな写真をあげたりすれば、「働けるだろ」と怒られちゃうでしょうが・・・)。

 

病気(うつ)の方の状態は、こころのガソリン(やる気)が入っていないのに、無理やり車を走らせているようなものです。ガス欠でアクセルを踏んでも、車(=あなた自身)は前に進みませんし、下手すれば故障してしまいます。自分がちょっとでも楽しいと感じられるものこそが、こころのエネルギーとなりますので、腰を据えて探していきましょう。小さな楽しみを積み重ねることで、はじめてこころのエネルギー補充が可能となります。

 

ただ、人によっては、楽しくもないのに達成感を求めて資格取得の勉強や激しい運動をして疲れたり、色々と手を出し過ぎて訳が分からなくなってしまう方もおられます。そういうことは避けるべきことですが、長い目で見れば、意外にそういう失敗もよいものです。何故なら、自分自身にシッカリ向かい合い、自分のペースを取り戻す練習となるからです。道に迷った時は、立ち止まって考えたり、周囲の人や、人事・医療・福祉の援助者に相談したりしましょう。