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鬱(うつ)が生じやすい考え方を整える:働きアリの法則

赤いコーヒーカップ https://pixabay.com/ja/users/stocksnap-894430/によるPixabayからの画像

鬱(うつ)でクリニックに通っていたり、休職している方から、「マイナス思考を変えたい」「メンタルを安定させたい」「これ以上、落ち込みたくない」といった相談をよく受けます。セラピストは、そういう相談があった時は<どのようにこれまで努力してこられたのか>を確認します。

 

すると「周囲から考え方を変えるようにアドバイスを受けました。でも、やってみてもうまくいきませんでした」といった回答がチラホラ。このアドバイスで上位にあがるものとしては、楽しいことを考えよう/物事をプラスの側面から見よう/他者に感謝しよう、などがあります。

 

もちろん、上記のアドバイスが大当たりして、元気になる方もいらっしゃいます。しかし、不発に終わって自分を責めている方が多いため、そういう方向けに、ブログをしばらく連載してみようと思い立ちました。

 

なお、連載の内容は認知行動療法のエッセンスを多分に含んでいます。セラピストは認知行動療法の専門家ではないのですが、有効性が高いことは分かっているので、そのエッセンスを随所で取り上げていきたいと思います。

ステップ1:『働きアリの法則』から学ぶ

働きアリが石を運ぶ画像 Günther AichhoferによるPixabayからの画像

『働きアリの法則』とは、よく働く2割の働きアリが、8割の食料を集めてくるというものです。これは、北海道大学の進化生物学者の長谷川英祐(はせがわ・えいすけ)先生の研究から分かった知見です。

 

ちなみに、この研究で非常に面白い箇所は、その他の8割のアリ(普通のアリ6割働かないアリ2割は、巣にとって邪魔者ではない、それどころか、これら8割のアリがいないと巣が存続しえない極めて重要な存在だということです。何故かと言うと、全てのアリが同時期に一生懸命働くと、皆が皆、同じ時期に疲れてしまい、アリ社会が崩壊するそうなのです。だから、ぼちぼち働いたり、シッカリ休むアリも巣にいないと困るそうで。社会性昆虫の面白いところです。

 

閑話休題。

 

『働きアリの法則』を人間の社会や行動にそのまま当てはめる訳にはいかないのですが、みなさんに覚えておいてほしいこと。鬱(うつ)が生じやすい考え方を整えようと努力した際、うまくいくのは10回試みて2回程度です。逆に言えば、8回は失敗します。

 

鬱(うつ)の時は、こころのエネルギーが減っているので、1回でも失敗するとガッカリして、それまでの自分の頑張りを全て放り投げて「自分は変われない」と思い込んでしまいがちです。でも、本当に成功を収めたいのであれば、数多く小さな失敗をすることが、うまくいく可能性を広げるためのコツです。何より、小さな失敗こそが、あなたが本当に変わっていくために必要な土台を作ってくれる行動なのです。

 

ということで、『働きアリの法則』を自分の頭の片隅に置くことが、自分を整える第1歩です。