発達障害と心理検査

 

テレビ等で発達障害の特集が組まれると、アスナサでは、心理検査のご依頼が急増します。特に、NHKで発達障害の番組が放送された時は、多数のお問い合わせがありました。その中で、皆様にお答えしたこと・考えたことを中心に記事にしてみました。

 

ちなみに、下記の写真は「くちなし」です。梅雨の頃に甘く咲く、くちなしの花はセラピストの1番好きな花です。

 

くちなしの花の写真 endro lewaによるPixabayからの画像

#1

発達障害の診断をしてくれますか?

が、お問い合わせの中で最も多いものです。「アスナサは医療機関ではないので診断はできませんが、診断補助となる心理検査はできます。必要であれば、医療機関を御紹介いたします」とお話しする中で、この『診断』について考えることがありました。

 

一般の方にとって『診断』とは非常に大きな意味を持つものだと思います。発達障害と診断される・されないには大きな違いがあると感じられることでしょう。しかしながら、実際の発達障害の診断というのは、どうしてもグレーゾーンがつきまといます。

発達障害の分かりやすい模式図

上図を見て頂くとお分かりのように

発達障害の特性があって診断基準を全て満たしている方が、発達障害と診断されます。

逆に発達障害の特性がない方は、定型発達(発達障害ではない人々)とされます。

 

ここまでは、白黒ハッキリしているので分かりやすい話でしょう。しかし

 

発達障害の特性があっても診断基準を満たしていない方は、発達障害の傾向がある人、俗にグレーゾーン(上図の赤い部分)とされます。

 

この説明だと「何のこっちゃ???」となる方が多くなりそうですね。実は、発達障害と診断されなくとも、発達障害の傾向を持ち、生きる上で困りごとを抱えているグレーゾーンの方は世の中にたくさんいるのです。

 

グレーゾーンの方は「発達障害の診断基準を満たしていないのだから、症状は軽いはず」と思われがちですが、そうでもありません。発達障害の特性が一部あるため、どんなに努力してもできないことがあって困っていたり、周囲の理解やサポートが得られにくいなど、グレーゾーンならではの難しさがあります。

 

ということで、まとめ。

 

発達障害を心配なさっている方は「診断してほしい」だけではなく、「自分が困っていること・自分の弱みを、どのようにカバーすればいいのか」「自分の強みは何だろうか」といったことを相談機関で尋ねてみることをお勧めします。仮にグレーゾーンと診断された場合であっても、この質問をすることで、今後の自分が得るものがあるはずです。


#2

心理検査について教えて下さい。

「心理検査で発達障害かどうか分かると聞いたので、やってほしいのですが」というお問い合わせも数多くありました。

 

基本的に、発達障害の診断は、ご自身の成育歴・現在のお困りごと・心理検査の結果などを総合的に評価して行う必要があります。ですので「心理検査のみで、発達障害かどうかは分かりません。検査結果を主治医の先生に伝え、自分のことを語る中で分かってくると思います」とお伝えすると共に、アスナサで行える心理検査について詳しく説明しました。その中で、お伝えした方が良いと感じた、心理検査のあれこれについて整理してみようと思います。

熊本の棚田の写真 Kohji AsakawaによるPixabayからの画像

発達障害の診断補助のために行われる心理検査には、いくつか種類があります。基本的には、発達障害の症状チェックと、能力に偏りがないかを調べる検査を組み合わせていきます。人によっては、他の病気(うつ病や強迫性障害など)をチェックする検査を受けて頂く場合もあります。

 

それらの中でも、知能検査は、自分自身の能力の特徴を知り、今後の生活に役立つ情報がたくさんつまっているため、受検する意味がある検査の1つだと思います。実際、アスナサでも「主治医の先生から受けておいでと言われました」と、知能検査のご依頼が1番多いです。

 

最近テレビのクイズ番組などでも取りあげられるせいか、一般の方でも「知能検査って、IQ(アイキュー)っていう知能指数が分かる検査でしょ。IQ100が普通の知能だと知っています」と言われます。ただし、発達障害を心配して受検なさる方は、総合的なIQの数値だけでなく、細かく各能力の凸凹を見ていく必要があります。その凸凹が、自己の得意不得意を理解する手助けとなります。そして、得意不得意が分かると、自分がどこで勝負すべきか、どこは工夫して対応すべきか、他者から手助けをもらった方がよい部分はどこなのかが見えてきます。

 

(個人情報の兼ね合いもあるので、かなり内容をぼやかしてありますが)実際のケースをご紹介しましょう。

『異動先の上司の言うことが分からなくて怒られてばかり』と嘆いていたAさんは、知能検査の結果、得意なことは見ることで、苦手なことは聞くことだと分かりました。そこで、とにかく上司の言うことは片っ端からメモを取って何を言われたか見直す・指示を出す際になるべく社内メールを活用してもらえないかお願いすることで、元々の努力家の性格もうまく作用し、会社内での適応が可能になりました。上司との軋轢も減り、本来の自信を取り戻すことができたAさんから「検査をして良かった」と連絡があった時は、とても嬉しかったです。 

他にも進路に悩んでいる学生さんから「自分の今後の専門選択のヒントになった」等の、お声を頂くこともあります。

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さて、アスナサでは16歳以上を対象にしたWAIS-Ⅳ(←ウェイス・フォーと読みます)とよばれる知能検査を実施しています。クイズのような形式で、頭を使って問題を解いていく検査となります。だいたい、検査の実施自体は2時間前後(90~150分)を見込んでいますが、事前面談も入れると、もう少し時間が必要です。長い方は、3時間を超えることもあります。このように長丁場になるため、検査を受ける際は、体調が良い時・検査後に何も予定がない時に予約して頂きたいと思います。

 

また、来室される際には、母子手帳・通知表・過去や現在困っていることのメモ書きなどを持参して頂けると幸いです。発達障害の診断を確実にするためには、現在の困りごとが昔からあるということが見極めのポイントになるため、幼少期の客観的な情報が分かる資料が必要です。しかしながら、既に資料が散逸して手元にないという場合は、親や先生や周りの方にどんな子どもだったと言われていたかを思い出してきて頂きたいと思います。

 

最後に、検査費用のお尋ねも多かったので記しておきます。

 

医療機関であれば、WAIS-Ⅳの医科診療報酬点数は450点ですので、4,500円と診察料金を合算することになります。そして、健康保険を使う場合は、合算分の3割をお支払いすることになります。

 

アスナサは医療機関ではないため健康保険は使えません。アスナサでの心理検査は、心理セラピーと同様の料金体系ですので1時間8,000円からとなりますが、WAIS-Ⅳは時間を気にせずに検査を受けて頂きたいため一律16,000円とさせていただいております。「病院に比べると高いですね」と言われることもありますが、ご依頼があって1週間以内の検査実施可(土日も実施)・検査道具の料金・検査の時間(約2時間)・分析のための時間・受検後10日以内の結果出し・結果をお伝えする時間(別日の30分)、を踏まえての料金設定ですのでご容赦ください。

 

なお、主治医の先生がおられる場合は、まず先生に受検をご相談ください。先生のご紹介があれば、検査前の面談にかける時間の短縮ができますし、結果をクリニックに郵送させて頂くため、料金は割引できます。 詳しくは、お問い合わせください。


#3

発達障害と分かるとどうなりますか?

この質問をされる方は、周囲の人(家族・友人・同僚)から「発達障害かもしれないから一度みてもらった方がよい」と強く勧められたからという当事者の方が主でした。

 

おそらく、周囲の人は、その方のためを思ってのアドバイスされたのでしょう。しかし、当事者の方は『自分は発達障害なのかもしれない。そうだったらどうしよう』と強い不安を抱えてセラピストに質問される、その様子を見聞きすると、私事にはなりますが、未だに健康診断(特に血液検査)が怖くて怖くて仕方がない私はとても共感してしまうのです。「検査なんて、できれば受けたくないよね」って。

 

ともあれ、発達障害と分かるメリットとデメリットについてお伝えしましょう。

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発達障害と分かるメリットを、以下に示します。グレーゾーンの方にも、これらは一部当てはまる所があるでしょう。

・うまくいかない原因がどこにあるかが分かり安心できる。

・発達障害の自覚があると、対応策(ライフハック)を前向きに考えられる。

・症状によっては、薬が効くことがある。

・よりよい対人関係の技術や生活スキルを身につけるキッカケとなる。

・周囲が理解をし、環境調整をしてもらえると、非常に過ごしやすくなる。

・いろいろな制度(障害手帳・障害年金・就労移行支援)が使える。

逆に、発達障害と分かるデメリットを、以下に示します。グレーゾーンの方にも、これらは一部当てはまる所があるでしょう。

・障害を受け止める心の準備ができていないと、ショックに耐えられない。

・周囲が理解をしてくれないと、より孤独になる。

・診断がつくと何かしら改善すると思っていたのに、変わらない場合に落ち込む。

・もっと早く幼い頃に分かっていれば、と後悔が残る。

他にもメリット・デメリットがあるかもしれませんので、診断を受けるかどうかは、自分自身で冷静に考えてからをお勧めします。

 

そして、周囲(家族・友人・同僚)も、ご本人に無理強いをしないようにしましょう。どうしても診断を受けてほしいと考える時は、まずは周囲が腹をくくる必要があります。「発達障害と分かった時は、それを受け入れて一緒に悩み考え、共に歩くぞ」という覚悟ができてから、ご本人と話をしてみることをお勧めします。