プラトーとは、心理学用語で『学習を続けているのにも関わらず成長が止まってしまう時期や現象』を意味しています。このことから、キャリアプラトーとは、働く人に訪れる停滞状態のことを指し示しています。
この停滞状態は、中堅~ベテラン層に起こりやすいと言われています。一時的な停滞であれば誰にでも起こりうる現象なのですが、長期化すると、働く意欲が低下したり、退職を考えるようになったり、鬱を引き起こすきっかけとなるなど、クライシスの原因となりえるため注意が必要です。
今回は、働く人が陥りやすい2つの停滞状態について説明し、そこからの抜け出し方のヒントをお伝えします。
中堅~ベテランになると、周囲から頼りにされ仕事も無難にこなせるようになる反面、自分でも気づかぬうちに、新しいことにチャレンジしようとする気概が低下する場合があります。
例えば ・「自分は、これが専門だから」と自身の得意な仕事だけにこだわる ・新しい仕事のやり方を認めない ・「老害」と影口を叩かれる |
人によっては、これまでの経験や積み重ねがあるにも関わらず、自信のなさが強まる場合もあります。
例えば ・「新しく学ぶことが多すぎる」と感じる ・「自分は年ばっかりくって成長できていない」と悩む ・「今のままでいい。難しいことや面倒なことはできない」と逃げの姿勢に入る |
プレイングマネージャー(管理業務と、これまでの業務を兼任)として働く人の中には、忙しすぎて心のゆとりがなくなっている場合もあります。
例えば ・作業量が多すぎて、目の前の仕事に追われ、将来を考えられない ・部下の指導や育成にまで手が回らない ・何のために働いているのか分からなくなる |
仕事上で行き詰まりを感じる最大の要因は、マンネリ化です。一部の専門的な仕事を除き、世の中のおおよその仕事は、基礎的な部分は3年でマスターできると言われています。あなたが、ある程度のことはこなせても、それ以上の域に達せなかったり、前に進むモチベーション(意欲)が不足してきた際は、これまでとは違った取り組みをし、新しい視点を自ら持てるようになる必要があります。
そのために、できること。
まず、自分自身が停滞状態に陥っていないか、自分自身を客観的に振り返る必要があります。そのためには、周囲からのフィードバックが1番。仕事上で立場が上になればなるほど、あなたに率直に意見を言ってくれる人は少なくなりますが、そういう存在こそ貴重であることを覚えておきましょう。
また、意欲が不足している時は、いったん立ち止まって自らの働くモチベーションについて考えることも必要です。「自分はなぜこの仕事を始めたのだろう」「自分にとって幸せとは何か」と考え、言語化することで前に進むことができる人もいます。また、専門的な知識やスキルを学んだり、他業界や他職種の人と交わることで、自己成長モチベーションを保つことができるかもしれません。同じ仕事であっても、新しい刺激を感じられるよう自分なりに変化をつけることが良い時もあるでしょう。
そして、忙しすぎる毎日になってしまっている人は、どこかで休みを取りましょう。その上で、普段考えられないようなこと(=自分が本来解決すべき課題は何なのか)について考え、自分しかできないことに取り組んでいくことで、停滞状態を脱することができます。
現在、自分が就いている職責以上に昇進する可能性がない(もしくは、ないと感じてしまった)ことで、頑張る気持ちがなくなる場合があります。
例えば ・周囲から評価されていないと感じ、落ち込む ・「昇進や昇給がないのだから、頑張っても一緒」と投げやりになる ・辞める勇気もないので「定年までつつがなく過ごしたい」と保守的になる ・今の仕事を続けても、自分のキャリア(市場価値)が向上しない気がする |
また、昇進自体がストレスになる場合もあります。そのため、管理職のポストを勧められないよう手を抜くことが出てきたりも。
例えば ・管理職になるよう勧められるが、責任が重すぎてムリ ・管理職になれば、プライベートに割く時間が少なくなるのでイヤ ・管理職は、そもそもめんどくさい |
昇進の停滞から来るキャリアプラトーで怖いことは、自身が何を目指せばいいか分からなくなったり、将来のキャリア像を描けなくなったりすることにあります。
それを防ぐために、できること。
キャリアの行き詰まりを感じた時は、社内の信頼できる上司や先輩に相談してみることをおススメします。あなたが進むべき方向を指し示してくれたり、あなたへの期待感を語ってもらうことで頑張る気持ちが芽生えてくるでしょう。場合によっては、社外の人に相談することもアリです。友人、既に転職した人、他社の同職種、新しい資格を得るための学校、転職サイトなどから、新鮮なアドバイスを受けることができるかもしれません。
また、管理職を目指したくない人は、なぜそう思っているのか上司や先輩に自分の気持ちを話してみることもいいでしょう。腹を割って話す中で、管理職ならではの仕事の面白さを教えてもらったり、(子育てや介護の)配慮をもらった上で管理職を目指すことができるかもしれません。また、管理職を目指すことだけが会社に貢献することではありません。管理職ではなくスペシャリストになりたいことを上司に伝え、今後どういった知識やスキルを伸ばせばいいか話し合うことも大切になります。
つらつら語ってきましたが、キャリアプラトー(働く人に訪れる停滞状態)で悩むことは苦しい出来事ではありますが、人生の中でのチャンスでもあります。何故なら、自分自身を見つめなおしたり、仕事の在り方を考える、またとないタイミングなのです。ただし、1人で悩むことが苦しい時は、セラピーの中で一緒に考えていきましょう。